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失敗するフィリピン親子留学 vs. 成功するフィリピン親子留学【1】:とにかく”安く”?!

フィリピン親子留学の失敗/成功:分けるのは何?
フィリピン親子留学の失敗/成功:分けるのは何?

◆ドゥマゲッティは親子留学のメッカ?!

親子留学の方が年々増えています。私どもの英語学校があるドゥマゲッティは、その治安のよさ・暮らしやすさから人気急上昇。夏休みともなると、「親子留学」のメッカの様相を呈します。

 

他国の文化に触れる機会に乏しく、英語でコミュニケーションする機会が少ない日本人が、親子で気楽・気軽にフィリピンにやってくる。素晴らしいことだと思います。

 

ただ、子どもの英語習得という点ではどうなのでしょうか。「できるだけ小さいうちから英語に触れさせて英語好きになってほしい」「10歳過ぎると発音が身につかないと言われているので・・」「子どもは語学の天才だと言われているので・・・」と概して親御さんは焦り気味、期待はハイレベルです。

 

では、フィリピン親子留学がこうした期待に果たして応えられているのでしょうか。この6年、親子留学に人気といわれるドゥマゲッティでさまざまな親子の方(英語学校内外とも)を拝見してきた英語学校経営者としては、期待通りの成果があがっているのかという点では疑問を感じています。

 

本記事では、3か月~1年間の中長期親子留学について、その辺りを考えてみたいと思います。 

キッズのレッスンでは身振り手振りを交えて先生も大奮闘!
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◆親が期待するほどの「効果」は?

3か月~1年の中長期留学を取り上げたのは理由があります。1週間~2か月間ほどの親子留学であれば、親御さんもそんな短い間にそれほど多くを期待しません。実際、現地のインターに通学しても早い子で自然と英語が口をついて出てくるのは、3か月目に入ったくらいからです。

 

ですから2か月以内の滞在では、留学ではなく「長めの親子旅行」と捉えた方が当たっています。バケーションをかねて、現地は本当に親子留学に相応しい所か、現地校では一体どんな教育をしているのか、英語学校のマンツーマンレッスンでどんな感じなのか、そんな疑問をクリアする「視察旅行」「体験留学」で終わります。

 

しかし、3か月を超えた留学ともなれば、ある程度の覚悟が必要です。費用はかさみますし、親も子もそれなりに犠牲を払います。母親にしろ、父親にしろ、仕事や家庭生活に多少とも支障が生じます。子どもにとっても、日本で通っていた学校、クラブ活動、習い事には行けませんし、他の家族や友達とも会えなくなります。双方、犠牲にするものも決して少なくありません。

 

このように親も子もそれなりに犠牲を払ったのだから、それなりの成果があってほしいと願います。親も子も「やっぱり、思い切ってきてよかったね」と笑顔で帰国の途につきたいと思うのは当然です。

 

実際、そのようになる方がいらっしゃる一方、そうならずに心身ともに疲れ果てて(時に母親がメンタル病んで)予定を早めて帰っていかれる方がいらっしゃるのも現実です。もうこれ以上は無理と“刀折れ矢尽きて”逃げるように帰っていかれるのです。

 

では3か月~1年間の親子留学で成功する親子がいる一方、失敗する親子がいるのはなぜでしょうか。何がその違いをもたらしているのでしょうか。

 

結論を先にいうと、その違いをもたらすのは大きくは次の二要因です。

1)経費:とにかく「安く」はNG

2)目的:とにかく「子どものため」はNG

フィリピンはお金を使う所、なぜなら日本より物価が安いから
フィリピンはお金を使う所、なぜなら日本より物価が安いから

◆とにかく”安く”に、大きな落とし穴

順にみていきます。まず、留学にかかる費用の問題です。フィリピンに親子留学が増えているのは、なんといってもその安さが一番の理由でしょう。フィリピンは英語公用国でありながら、米国、カナダ、英国などの英語母語圏の国々に比べて物価が格段に安い国です。

 

現地でアパート借りて、自炊して、子どもは現地校に通わせて、親は家庭教師をみつけて英語を勉強するというやり方(自前留学/現地校留学)にすれば日本に住むより安くつくと思われています。

 

この「自前留学/現地校留学」には大きな落とし穴があります。平均的なフィリピンの生活レベル・クオリティの低さです。もちろん、皆さまそれなりに覚悟はしていらっしゃいます。いらっしゃいますが、レベル・クオリティの低さは、日本人の想像をはるかに超えています。年配の留学生はこちらにいらしてからよくおっしゃいます、「ちょうど5060年前の日本ですね」と。

 

9000ペソ(約2万円以下)のアパートだと、生活トラブル(トイレが流れない、雨漏りがする、ドアがあかないなど)が多発します。水圧は弱い。停電もかなり頻繁。排水口からはドブ臭い臭気。

 

修理を頼んでも、「明日」「明日」でなかなか来てくれません。やっと来てくれたと思ったら、「この部品を買ってきて!」と言ったきり帰っていってしまいます。「買ってきて」ってどういうこと!? 修理してほしい人が部品を買いにいくのがフィリピン流なのです。そんなこんなで修理まで最低でも3日かかるのが常。ドブ臭い臭気に至っては構造上の問題なので我慢せざるを得ません。  

 

自炊も容易ではありません。当たり前ですが、日本の食材はごく限られたモノしか売られていませんし、日本で買うより高いです。別に日本の食材でなくてもOKと思ってみても、食材(野菜、肉、食料品など)は日本もものとは似ても非なる味。ならば外食をと思っても、現地の人がよく行くレストランのものは脂っぽく、塩辛く毎日は食べられません。外国人がよく利用するレストランはそれなりのお値段。日本とほとんど変わりません。

 

子どもが通う現地校にしても、運営がいい加減なところが多く、突然の行事キャンセルや当日の午後休校なども多発します。加えて、学校の食堂で買う食べ物はまずくて食べられないと子どもが言うので、朝晩の送迎に加えて、給食まで届ける(あるいは届けたものを一緒に食べる)羽目に。一日、三度、炎天下、学校を往復するので体力を消耗します。

 

現地で満足できる家庭教師を探すのも至難の業。英語力が高く教えるのも上手な人は、すでに英語学校や会社・役所で雇用されています。別の記事(「ィリピン留学の泣き所-ココさえクリアできれば」)で紹介しましたが、文法重視の日本人の目からはフィリピン人の英語は必ずしも高くないのです。気に入った家庭教師に出会うまで最低でも半年はかかるでしょう。

「自前留学/ 現地校留学」では英語以前の問題が多過ぎ
「自前留学/ 現地校留学」では英語以前の問題が多過ぎ

◆子連れの日本人なら「一か月10万円」はまず無理

数年前、「1か月10万円でできるフィリピン親子留学」というコピーがネットでバズっていましたが・・・。このフレーズには通信料、電気代、一部の日用品(トイレットぺーバーなど)はむしろフィリピンの方が高い現実が見過ごされています。ですからこのコピーは「ネットもエアコンもトイペも使わない極貧生活をすれば」の但し書きがつかない限り無理です。

 

要するに当初思っていたほどことは順調に進まないのです。経費とストレスは反比例。安くすまそうとするほど、ストレスは増大。また、逆に、経費と安全性は比例します。語学学校や外国人が多く居住する高級リゾートでは、セキュリティ・ガードが出入りする人をチェックしていますし、CCTV(防犯カメラ)が犯罪抑止力を発揮します。

 

大人だけなら、貧乏旅行・貧乏留学もまた楽し・何事も経験よとタカをくくっていられます。私も独身時代は海外ではむしろ日本クオリティと無縁を好みました。しかし、子ども同伴となるとそうは言っていられません。治安のよさと安全性は確保すべき最低限の条件となってきます。

英語がわからなくても、すぐにお友達に!
英語がわからなくても、すぐにお友達に!

◆ストレスがマックスに

慣れないところで気を張って「安かろう、悪かろう」の生活を続けていると、たいていの人は疲れてきます。イライラしてきます。“矢尽き刀折れて”となりがちです。

 

私たちも例外ではありません。6年の間に安息の地を求めて自宅を5回引っ越しました。1回目は雨漏り、2回目は早朝2時半からのけたたまし鶏の鳴き声(一部の都会を除いてフィリッピンでは一般的)、3回目は海辺ゆえのセキュリティ不安、3回目はネットがつながらないストレスなどなど受難は続きました。

 

経費を抑えたいなら「自前留学」はありですが、「英語を学習する」以前の問題が多過ぎです。本来の目的に注力するには、せめて日本人スタンダードの7~8割掛けで生活でき、セキュリティもいる、それだけにそこそこ高いアパートメントに住むか、期間を短くしてでもこれらの生活上のトラブル・治安の問題はほぼほぼクリアしてくれる英語学校を選択することをおススメします。

 

英語学校の経営者がこんなことを言うと、「営業か~?!」とツッコミが入りそうですが、「衣食住+安全」(衣は洗濯の意味)の憂いなく過ごせる英語学校は、その分落ち着いてクオリティの高い学習ができるという点で逆にコスパがいいのです。

 

昔から“安物買いの銭失い”と言いますが、せっかく親にとっても子どもにとっても貴重な時間を使って留学するのです。少なくとも最初のうち現地に慣れるまでだけでも英語学校を拠点にするのは賢い選択だと思います。

 

 

そしてこの間に、ここなら安心・安全に暮らせそうと思われる所を見つけたら、そこで初めて自立する道(自前留学/現地校留学)を探るのもありです。そして、さらに親子ともに絶好調と感じたら、次のステップとして「教育移住」を考えてみてはいかがでしょうか。

【筆者紹介】平山順子  

元名古屋大教育学部准教授(発達心理学Ph.D)

共著書『家族心理学への招待』(ミネルヴァ書房、2019年現在、第2班9刷発行のロングセラー)

現在、フィリピンで英語学校「ウィル・イングリッシュ・アカデミー」を経営。発達心理学の視点から子育てを応援するサイト「ワクワク育児革命~子育て・夫婦関係に悩むママ・パパのために」を運営。

 

【お願い】英語学校ウィルは地元少年サッカーチームSPARTAN FC(貧困家庭の子どもたちが中心)のスポンサーをしています。地元リーグで準優勝を飾る強豪(?!)なのですが、靴はボロボロ、ボールはボコボコが悩み。中古のサッカー用品(靴7~17歳)を寄付してただけませんか? 「お問い合せ」でご連絡下さい。