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フィリピン人にとってもはや日本は魅力ない?!-介護のグローバリゼーションの中で【1】

フィリピン人にとってもはや日本は魅力ない?!-介護のグローバリゼーションの中で【1】

老人ホームで高齢者のお世話をするフィリピン人介護士
老人ホームで高齢者のお世話をするフィリピン人介護士

 

以前、私は、「フィリピン・パブ嬢は可哀そうだったのか?!」で、「一国の一部の職種(エンターテイナー)、片方の性(女性)だけが他国に大量に来るということは、このような深刻な弊害をもたらします」、だから問題だと書きました。

 

しかし、いま私は「介護」の分野にフィリピン人がもっと来てくれればいいのにと思っています。つまり、個人的には、「フィリピンケア(介護)ブーム」が来てくれればいいのにと願っています。かつて、「フィリピンパブブーム」が日本中を席捲したように・・・

 

言っていること、明らかに矛盾しています。ごめんさない。しかし、矛盾はお許しいただき、なぜ「介護」なのか? なぜ「フィリピン人」なのか? 耳を貸していただければと思います。

◆介護の現場に人がいなくなったら・・・

昨今、日本では労働力不足が深刻さを増しています。普段の生活でもそれを実感させられる日々。先日も、ケーキが食べたくで近所の商店街に行ったら、ケーキ屋さんの戸が閉まっていました。扉には「スタッフがいないので、しばらくの間お店を閉めさせていただきます」の張り紙。ガーン。

 

先週も都内で介護施設を2つ経営する知人と雑談をしていたら、「求人出して1年以上経つけど、全く反応なし・・・。このままでは廃業よ~」と危機感を募らせていらっしゃいました。

 

こんな状況を見聞するにつけ、私は「日本、大丈夫か~」と不安になります。ケーキは我慢するにしても、老人ホームに職員がいなくなったら・・・の不安は切実です。人手不足が深刻な業種は、農業、介護、建設。中でも一番深刻なのが介護です。

 

5~6年前から若い世代はもとより定年世代を狙ってみるも、給料を思い切って上げてみるも、新規参入はほとんどなし。ハコ(建物)は作れどヒト(介護職員)が集まらなくて開業できない施設は数知れず。介護度の高い高齢者にとってぜひとも入りたい特別養護老人ホーム(特養)に至っては、入所希望の半数しか入所できていない(約半数の52万人が待機中)のが現状です。

 

少子高齢化・核家族がものすごい勢いで進む日本。そこに住むわれわれは、大方、歳を取って足腰立たなくなったら、老人ホームのお世話にならざるをえないでしょう。仮に運よく入れたとしても、そこにはどんな生活が待ち受けているのでしょうか。

 

「さっきからトイレ行きたいんだけど~(泣)」、呼び出しブザーを押せども押せども誰も来てくれません。「あ~、どうしよう~」と限界に達したとき、ようやく来てくれた職員の顔はメチャ不機嫌。モノを扱うように車椅子の載せられ、やっと用を済ませることができました。実は、これ、老いた父君を(決して費用は安からぬ)老人ホームに入れた友人から聞いた実話です。

 

ご存じでしたか、「2025年問題」? 団塊の世代が後期高齢者になる2025年、その需給関係から介護人材が約38万人は不足するといわれています。トイレに行きたいのに我慢を強いられる高齢者は数知れず、徘徊老人が跋扈する事態さえ予測されています。「介護難民」の大量発生です。

2025年問題:「介護難民」の大量発生が懸念されています
2025年問題:「介護難民」の大量発生が懸念されています

◆外国人だけが頼りに

一体、どうすればいいのでしょうか?

 

今から10年以上の前、全国福祉施設協議会会長の中村弘彦さんは、「介護を外国人に頼らざるを得ない時代に入った」と述べています。「外国人の受け入れを真剣に考えないと、将来困ったときに誰も来てくれない」とも(2008・3・14「読売新聞の『開国・介護現場』」欄より)

 

「移民」政策に反対していた自民党政府も、背に腹は代えられないと思ったのでしょう。最近、政策の大転換を行いました。事実上、「移民」政策への転換です。実は、10年ほど前から外国人介護人材の受け入れは行ってきました。しかし、経済連携協定(EPA)により、日本との経済関係を強化するという目的でわずか3か国(インドネシア、フィリピン、ベトナム)からの受け入れに限られていました(過去10年間の累計受け入れ人数は3か国併せて約5,600名)。

 

ところが、ここにきて、EPAに加えて下記の3つの制度で介護人材の受け入れがスタートします!

1つ目は、「外国人技能実習制度」です。この制度は、1960年代以降、長らく外国人労働者の受け入れをしてきた制度です。名目、発展途上国に日本の進んだ技術を移転することを目的にしてた制度ですが、それはあくまで建前。米国国務省に「強制労働だ」と批判されたとおり、実質、単純労働職種(農業、建設、機械など78職種)で労働力不足を補う制度です。2017年、この制度に「介護」が追加されました。

 

2つ目は、日本での在留資格に「介護」が追加されました。これまでは高い専門性をもつ「高度人材」(研究者、技術者など)を対して認められてましたが、2017年、新たに「介護」が追加されました。これにより、「留学生」の資格で日本に来た外国人が、介護福祉士の国家資格を取得後、日本で永続的に就労できるようになりました。注目すべきは、この法改正により、日本は世界中から介護士を受け入れることが可能になったことです。

 

3つ目は、「特定技能1号」です。人手不足対応のため、一定の専門性・技能を有する外国人の受け入れが今年(2019年)からスタートした制度です。上記の方法(EPA、技能実習、在留資格「介護」)を大きく上回る6万人が予定されています。ただし、日本における就労は通算5年に限定されています。したがって、採用された外国人がどんなに優秀であっても、定年まで勤めてもらうことはできません。

 

政策の大転換です。日本の介護現場も大きく変わってゆくことでしょう。いや、変わらなければ日本の介護が立ち行かない、そんな瀬戸際に立たされています。

 

以上、なぜ「介護」なのかがお分かりいただけたかと思います。では、次に、その介護になぜ「フィリピン人」なのかについてご説明します。

研修中の外国人介護士候補生:夢と不安を胸に
研修中の外国人介護士候補生:夢と不安を胸に

◆なぜ「フィリピン人」なのか?

フィリピンは世界でも有数の「出稼ぎ国家」です。国民の多くが海外で働くことを希望し、約10%(なんと10人に1人)が海外で働いています。海外労働者からの送金額はGDPの約13%を占め、活発な国内消費および国内経済を支えています。

 

フィリピンでは、過去40年間以上に及んで、政府が計画的に移民出国制度を整備、海外就労向け教育制度を充実させてきました。これは、政府が国策として「海外出稼ぎ」を推進・奨励してきた結果です。

 

しかし、いくらフィリピン政府が自国民を海外で働かせたくても、また、いくらフィリピン人が海外で働きたいと願っても、受け入れてくれる国がなければ願いはかないません。この点、フィリピン人は世界中から引く手あまたなのです。人気の理由は次のとおりです。

 

1)英語ができる:20世紀前半、米国の支配下にあったフィリピンでは、英語は現在でも公用語です。世界共通語となった英語を話せるので、世界中どこにいってもコミュニケーションがとれます。

 

2)教育水準が高い:同種の仕事に就く他国の労働者と比べて、教育水準が高い(ASEAN諸国の中でトップレベル)。教育水準が高さが労働者としての資質の高さを保証しています。

どこに行っても明るく元気いっぱい:さあ、頑張ろう!
どこに行っても明るく元気いっぱい:さあ、頑張ろう!

【筆者紹介】平山順子

 

元名古屋大教育学部准教授(発達心理学Ph.D)

共著書『家族心理学への招待』(ミネルヴァ書房、2019年現在、第2班9刷発行のロングセラー)

現在、フィリピンで英語学校「ウィル・イングリッシュ・アカデミー」を経営

【お願い】ウィルは地元少年サッカーチームSPARTAN FC(貧困家庭の子どもたちが中心)のスポンサーをしています。地元リーグで準優勝を飾る強豪(?!)なのですが、靴はボロボロ、ボールはボコボコが悩み。中古のサッカー用品(靴7~17歳)を寄付してただけませんか? 「お問い合せ」でご連絡下さい。